さまざまな野鳥の囀りが静かな円山ステッチでは、あとひと月を切った「円山マルシェ」の準備を本格的にしています。
2011年の4月にわたしの暮らす円山ステッチをオープンにして始めた小さなマルシェが、来月には関西で開催だなんて、その頃は夢にも思っていませんでした。ただ、毎回伝えたかったのは、円山ステッチのもつ空気感やここで紡ぎだされる人と人のつながりや季節の声に耳を澄ませた暮らしの提案でした。
でも不思議ですね。小さな規模でしたが、持ち前の「暮らしを愉しむ心」だけはたぶんわたしにはたくさんあり、その心は、スタッフの娘にも受け継がれ、娘たちだけでなく、気がついたら、わたしの周りにはたくさんの暮らしを愉しむ人たち、またこれからそうなりたい人たちがいたのは、奇跡のような素敵な現象なのでした。
「マルシェ」という言葉がまだ新鮮だった頃、「マルシェ」と付けたのは、実はフランスが好きだからです。フランス人の自分に責任をもち生活を工夫しながら愉しむスタイルは、まだ10代の頃から憧れていて、20歳の時はひとりananのツアーに参加したわたしです。30歳の年には夫とふたり旅をし、その時はパリにひと月弱滞在し、暮らしをほんの少しだけ体験したことは、昨日のことのようで、今の暮らし方に影響があったと思います。
「人生はアート」、よく耳にする言葉ですが、誰だって暮らしのアーチストには、なれるかもと思っているのです。自分が心地よいのが一番大事。そして、家族や親しい方が心地よいのが大事。そしてその心地よさは小さなことの積み重ねなんだと思うのです。
朝起きたら、祈るように。
そして、一杯のお茶を淹れる時間を慈しむように。
そのお茶がおいしいと思えたらうれしいし、一杯のお茶や手に包んでいるうつわの向こうに、見えなかったものが見えてきますようにと。
どうぞ、生きていることが歓びになりますようにと。
手から生まれ出される工藝品や自然と寄りそうものの力で癒される日々でありますようにと。
そんな気持ちで工夫したくなる暮らしは、アートのように思えるのです。
忙しい時こそ、庭の花に声をかけ、そして空を見上げ祈りながら、「円山マルシェ」の準備をしています。
ホントに、秋の空は美しいですね。
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円山マルシェin 阪急
2018 winter
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ディレクション
galley 円山ステッチ 佐野明子